第一回 Combat Commander シリーズの紹介

CCシリーズは1ユニット分隊の規模で第二次世界大戦の戦術戦闘を再現する戦術級のウォーゲームです。システムの基幹はカードドリブン (CDS) と呼ばれるシステムで、手札を消費することで指揮下の部隊に行動を取らせていく形式ですが、アクションの実行方法は既存のCDSゲームよりはカードを使った戦術級ゲームの先駆である Up Front (AH)に近いシステムを持っています。
このシステムの眼目は特定の行動を取るためには原則として対応する命令カード(例:部隊を移動させるには移動カード、射撃戦をさせるには射撃カード等)が必要なことです。これは戦術レベルにおける指揮の困難さをシミュレーション性とゲーム性を両立させた上で再現する好システムだと思うのですが、反面、プレイヤーが自在に指揮下の部隊に命令を下せるという一般的なウォーゲームにおける醍醐味のひとつを制限しています。敵が目の前にいるのにカードがないために射撃命令が出せないのを、不自然もしくはストレスと感じるか、種々の要因による戦場の混乱の表現と受け取るかで、このゲームの評価は分かれると思います。

CCシリーズには、大きく分けて、ヨーロッパ戦線を扱うCombat Commander: Europe (CC:E)と、太平洋戦線を扱うCombat Commander: Pacific (CC:P)が存在します。先行して発売されたCC:Eは最初のボックスで独米ソの三カ国、拡張ボックスの地中海で伊英仏(および両陣営の中小国)が追加され、シナリオパックも3点発売済み、更に来年にはパルチザンをサポートする3個目のボックスも予告されているなどかなり手厚く拡張が続いています。一方、CC:Pの方は現時点では基本ボックスのみで、日米英の三軍しかフォローされていませんが、最初のバトルパックとしてニューギニアがアナウンスされているので中国戦線等は今後に期待でしょうか。
若干残念な点としては、両戦線のゲームは細部でルールやカードの仕様が異なっているため戦線を混ぜた仮想の対決をすることはできません。また、連合軍と枢軸軍のデッキを噛み合わせでランダム性を持たせているため、連合国同士、もしくは、枢軸国同士の戦闘を再現するのは不可能ではないにしても、本来もっている乱数装置が完全には働かない構成になってしまいます。
ついでなので、CCの弱点をもうひとつ書いておきます。第二次世界大戦の特徴のひとつに機甲戦術がありますが、類似スケールの多くのゲームと異なりこのゲームには装甲車輌 (AFV) の類は原則として登場しません(※)。この点について、ゲームのスケールとマップの広さ的に戦車を登場させるのは適切ではないとデザイナーが明言しているので、今後のモジュールでも供給される可能性は低いと思われます。
※例外的に、砲兵射撃を盤外に布陣した機甲部隊による支援砲撃とみなすシナリオはいくつかあります。
次回からしばらくCC:Eに絞ってゲームの紹介をしていく予定です。